JIS B 6905:1995
金属製品熱処理用語
Heat treatment for metal products−Vocabulary

(1)熱処理一般
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(2)熱化学処理
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(3)高エネルギー熱処理
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(4)拡散浸透処理
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(5)品質・試験
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金属製品熱処理用語
Heat treatment for metal products−Vocabulary

(1)熱処理一般
用語 |
定義 |
対応英語(参考) |
---|---|---|
熱処理 | 金属製品に要求される所要の性質を付与する目的で,雰囲気,加熱,冷却,圧力,電磁 気などの組合せによって行う処理(1)。注(1) JIS G 0201及び JIS H 0211参照。 |
heat treatment |
全体熱処理 | 金属製品の全体にわたって行う熱処理。 | bulk heat treatment |
部分熱処理 | 金属製品の特定部分について行う熱処理。 | localized heat treatment ; local heat treatment ; partial heat treatment |
表面熱処理 | 金属製品の表面に,所要の性質を付与する目的で行う熱処理。 | surface heat treatment |
表面硬化(処理) | 金属製品の表面層を硬化するために行う処理(2)。注(2) JIS G0201参照。 | surface hardening |
複合熱処理 | 金属製品において,複数の熱処理などの組合せによる熱処理。 | duplex heat treatment |
雰囲気(制御)熱処理 | 炉内の雰囲気を,目的によってそれぞれ調節して行う熱処理(1)。備考 雰囲気に は,不活性,酸化性,還元性,浸炭性,窒化性,浸炭窒化性などのガスがある。 |
controlled atmosphere heat treatment |
光輝熱処理(こうきねつしょ り) |
保護雰囲気中などで熱処理することによって,表面の高温酸化,脱炭などを防止し,表面 光輝状態を保持する熱処理の総称(2)。 備考 光輝焼なまし(bright annealing),光輝焼入れ(bright quenching),光輝焼戻し (brighttempering)などがある。 |
bright heat treatment |
真空熱処理 | 真空炉中で行う熱処理の総称(1)。 | low-pressure heat treatment, vacuum heat treatment |
塩浴熱処理(えんよくねつしょ り) |
塩浴炉中で行う熱処理の総称(2)。 | salt-bath heat treatment |
流動層熱処理 | セラミックスなどの粒子の流動による流動層炉中で行う熱処理の総称。 備考1. 流動床熱処理ともいう。 2.流動層焼入れ (fluidized bed quenching),流動層浸炭 (fluidized bed carburizing),流動 層窒化(fluidized bed nitriding),流動層オーステンパ(fluidized bed austempering)などがあ る。 |
heat treatment in fluidized beds |
焼なまし | 金属の機械的性質を変化させ,残留応力の除去,硬さの低減,延性の向上,被削性の 向上,冷間加工性の改善,結晶組織の調整,ガスその他不純物の放出,化学組成の均 一化などを行うための処理(3)。 注(3) JIS B 6911,JIS G 0201及び JIS W1103参照。 備考 保 護 雰 囲 気 焼 な ま し (protective-atmosphere annealing),真空焼 なまし(vacuum annealing),箱焼なまし (box annealing),光輝焼なまし (bright annealing), 完全焼なまし(full annealing) などがある。 |
annealing |
完全焼なまし | 鉄鋼製品の結晶組織を調整し,軟化するため,Ac3又はAc1点以上の適切な温度に加熱 した後,通常は徐冷する処理(3)。 備考 非鉄金属製品の最低の強さと最上の加工性を得るための焼なまし。 |
full annealing |
(鉄鋼製品の)等温焼なまし | 鉄鋼製品の結晶組織を調整し,軟化を容易にするため,Ac3又はAc1点以上の適切な温 度に加熱した後,パーライト変態が最も急速に進行する温度よりやや高い温度まで強制 冷却し,この温度に等温変態完了まで保持してから,空冷する処理(4)。 注(4) JIS B 6911及び JIS G 0201参照。 |
isothermal annealing of steel |
軟化焼なまし | 金属の硬さを低下させ,後の塑性加工,切削加工などを容易にするための処理(4)。 備考 鉄鋼製品の軟化焼なましでは,Ac1点の上又は下の温度に加熱した後,空冷 する。 |
softening |
低温焼なまし | 軟化又は残留応力の低減のために低温度で行う焼なまし(4)。 備考 鉄鋼製品の低温焼なましは,Ac1点以下の適切な温度に加熱した後,通常は 徐冷する。 |
low-temperature annealing |
応力除去焼なまし | 加工ひずみ又は残留応力を除去するために行う焼なまし(4)。 備考 鉄鋼製品の応力除去焼なましは,Ac1点以下の適切な温度に加熱した後,通 常は徐冷する。 |
stress relieving; stress relief annealing |
球状化焼なまし | 鉄鋼製品の機械加工性及び冷間加工性を改善し,又はじん(靱)性を向上するために, 炭化物を球状化させる処理(4)。 |
spheroidizing ;spheroidizing annealing |
焼ならし | 鉄鋼製品の前加工の影響を除去し,結晶粒を微細化して,機械的性質を改善するため に,Ac3又はAccm点以上の適切な温度に加熱した後,通常は空気中で冷却する処理 (4)。 |
normalizing |
二段焼ならし | 鉄鋼製品の焼ならしと同様に行う処理で,処理後のひずみの低減を図るために,Ar&# 8242;点付近の温度より更に炉冷,灰中冷却などの徐冷を行う処理(4)。 |
stepped normalizing |
等温焼ならし | 鉄鋼製品の結晶組織を調整し,軟化するために,Ac3又はAccm点以上の適切な温度に 加熱した後,パーライト変態が最も急速に進行する温度付近まで強制冷却し,この温度に 等温変態完了まで保持した後,空冷する処理(5)。 注(5) JIS B 6911参照。 |
isothermal normalizing |
焼入れ | 金属製品を所定の高温状態から急冷する処理(6)。 注(6) JIS B 6913,JIS G 0201及び JIS W1103参照。 備考 水焼入れ,油焼入れ,塩水焼入れ,熱浴焼入れ,塩浴焼入れ,空気焼入れ, 衝風焼入れ,ガス焼入れ,噴霧焼入れ,噴射焼入れ,接触焼入れなどがある。 |
quenching |
焼入硬化(処理) | 金属製品を所定の高温より急冷して,硬化させる処理。 備考 鉄鋼の焼入硬化では,単に焼入れともいう。 |
quench hardening treatment ; quench hardening |
中断焼入れ | 焼入れによるひずみの発生及び焼割れを防ぎ,かつ焼入れ後の性質を適切に調節する ために,焼入れ途中から金属製品を引き上げ,大気中に放冷するか,又は適切な冷却 剤中で冷却する処理(2)。 備考 階段焼入れともいう。 |
interrupted quenching |
時間焼入れ | 焼入れによるひずみの発生及び焼割れを防ぎ,かつ焼入れ後の性質を適切に調節する ために,焼入れ途中から金属製品を引き上げ,大気中に放冷するか,又は適切な冷却 剤中で冷却する処理(2)。 備考 階段焼入れともいう。 |
time quenching |
プレスクェンチ | 金属製品で焼入れ変形が発生しないように,プレスして行う焼入れ(2)。 | press quenching |
部分焼入れ | 金属製品の特定部分について行う焼入れ(2)。 備考 局部焼入れともいう。 |
Localized quenching ; selective quenching |
無心焼入れ | 金属製品の断面中心(心部)まで硬化する処理。 備考 心部焼入れ又はずぶ焼入れともいう。 |
through hardening |
水焼入れ | 金属製品を所定の高温状態から,水中で冷却する処理(7)。 注(7) JIS B 6913参照。 |
water quenching |
油焼入れ | 金属製品を所定の高温状態から,油中で冷却する処理(7)。 | oil quenching |
熱浴焼入れ | 金属製品を所定の高温状態から,油,溶融塩(塩浴),溶融金属などの熱浴中で冷却す る処理(7)。 備考 溶融塩による場合を, 塩浴焼入れ(salt bath quenching)という。 |
hot bath quenching |
空気焼入れ | 金属製品を所定の高温状態から,空気中又は適切な送風により冷却する処理(7)。 備考 送風による場合を,衝風焼入れ (air-blastquenching)という。 |
air quenching |
ガス焼入れ | 金属製品を所定の高温状態から,窒素,アルゴンなどの不活性ガスで冷却する処理(7)。 | gas quenching |
噴霧焼入れ(ふんむやきい れ) |
金属製品を所定の高温状態から,水などの噴霧で冷却する処理。 | fog quenching |
噴射焼入れ | 金属製品を所定の高温状態から,水,油,ポリマー水溶液などを噴射して冷却する処理。 | spray quenching |
接触焼入れ | 金属製品を所定の高温状態から,冷し金などに接触させて冷却する処理。 備考 冷し金とは,冷却を促進させるための金物。 |
die quenching |
水溶液焼入れ(すいようえき やきいれ) |
水に高分子物質を添加して,冷却速度を調節した冷却剤を用いた焼入れ(7)。 備考 ポリマー焼入れともいう。 |
polymer quenching |
グリコール焼入れ | 焼入れにおいて,最小の熱処理変形又は低い残留応力が望ましいときに,冷却剤とし て,ポリアルキレングリコール水溶液を冷却剤として使用する焼入れ(8)。 注(8) JIS W 1103参照。 |
glycol quenching |
冷却剤 | 焼入れに使用される水,ポリマー水溶液,油,ガス,溶融塩(塩浴),溶融金属などの総 称。 備考 水溶液焼入剤(ポリマー焼入剤) (polymer solution),焼入油 (quenching oil) ,焼入 ガス(quenchinggas)などがある。 |
quenching media ;quenchant |
マルテンパ | 鉄鋼製品の焼入れによる変形の発生や焼割れを防ぎ,かつ,適切な金属組織を得るた め,マルテンサイト生成温度域の上部又はそれよりやや高い温度に保持した冷却剤中に 焼入れして,各部が一様にその温度になるまで保持した後,徐冷する処理(2)。 備考 マルクェンチともいう。 |
martempering ;marquenching |
オーステンパ | 鉄鋼製品の焼入れによる変形の発生や焼割れを防ぐとともに,強じん(靱)性を与えるた めに,Ac3又はAc1点以上の適切な温度に加熱して,安定なオーステナイト組織にしたも のを,変態を阻止して,そのままフェライト及びパーライト生成温度以下,マルテンサイト 生成温度以上の適切な温度範囲に保持した冷却剤中に急冷し,その温度でベイナイトに 変態させた後,室温まで冷却する処理(2)。 |
austempering |
サブゼロ処理 | 鉄鋼製品の耐摩耗性の向上,経年変形などを防ぐために,焼入れ後直ちに0℃以下の低 温度に冷却する処理(2)。 |
sub-zero treatment |
焼戻し | 焼入れした組織を,変態又は析出を進行させて安定な組織に近づけ,所要の性質及び 状態を与えるために,適切な温度に加熱し,冷却する処理(2)。 備考1. 鉄鋼製品では A1点以下の温度に加熱する。 2.低温焼戻し(low-temperature tempering, first-stagetempering),高温焼戻し(high- temperature tempering),繰返し焼戻し(multipletempering),二回焼戻し(double tempering),プレス焼戻し (press tempering) などがある。 |
tempering |
焼入焼戻し | 鉄鋼製品を Ac3又はAc1点以上の適切な温度に加熱後,適切な冷却剤で急冷(焼入 れ),ついで焼入れによるぜい(脆)性を改善し又は硬さを調節し,若しくはじん(靱)性を 増すために,Ac1点以下の適切な温度に加熱した後,冷却する(焼戻し)処理(7)。 |
quenching and tempering |
(鉄鋼製品の)調質 | 鉄鋼製品を焼入硬化後,比較的高い温度(約400℃以上)に焼戻して,トルースタイト又は ソルバイト組織にする処理(2)。 |
thermal refining |
(非鉄金属製品の)調質 | アルミニウム合金,銅合金などにおいて,所定の機械的性質などを得るために行う熱処 理及び冷間加工又はその組合せの処理。 |
refining |
溶体化処理 | 金属の合金成分が固溶体に溶解する温度以上に加熱して,十分な時間保持し,急冷し て,その析出を阻止する処理(9)。 注(9) JIS G 0201及び JIS W1103参照。 備考 固溶化熱処理ともいう。 |
solution treatment |
時効硬化処理 | 硬さ,強さ又は耐食性などを増進させるために適切な高温,又はある種類の合金や質別 に対しては室温で,溶体化処理(固溶化熱処理)した製品を均熱保持する処理(8)。 備考 析出熱処理ともいう。 |
ageing treatment ;ageing ; precipitation hardening treatment;precipitation heat treatment |
真空焼入れ | 真空炉を使用して,真空又は少量の不活性ガス中で加熱後,冷却剤として,水,油又は ガスで焼入れする処理。 備考 真空水焼入れ (vacuum waterquenching),真空油焼入れ(vacuum oil quenching),真空ガス焼入れ(vacuum gas quenching)などがある。 |
vacuum quenching |
真空焼戻し | 真空炉を使用して,真空又は少量の不活性ガス中で焼戻温度に加熱後,真空中又は不 活性ガスなどで冷却する焼戻し。 |
vacuum tenpering |
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(2)熱化学処理
用語 |
定義 |
対応英語(参考) |
---|---|---|
熱化学(熱)処理 | 金属製品と雰囲気又は処理剤との化学反応及び熱拡散を利用した熱処理の総称。 備考 浸炭,浸炭窒化,窒化,軟窒化,浸硫窒化などがある。 |
thermochemical treatment |
浸炭 | 鋼製品の表面層の炭素量を増加させるために,浸炭剤中で加熱する処理(2)。 備考 浸炭剤の種類によって,ガス浸炭,真空浸炭,液体浸炭,滴注浸炭,固体浸 炭などがある。 |
carburizing |
浸炭焼入れ | 鋼製品を浸炭後焼入れする処理。 | carburizing an quenching |
直接焼入れ | 浸炭又は浸炭窒化温度などから,直接に焼入れする処理。 | direct quenching |
ガス浸炭 | 鋼製品を,浸炭性ガスの中で加熱し,浸炭を行う処理(10)。 注(10) JIS B 6914参照。 |
gas carburizing |
真空浸炭 | 鋼製品を,真空炉において,減圧した浸炭性ガスの中で加熱し,浸炭を行う処理(10)。 | vacuum carburizing ;partial pressure carburizing ;low pressurecarburizing |
液体浸炭 | 鋼製品を,液体浸炭剤(浸炭塩浴)の中で加熱し,浸炭を行う処理(10)。 備考 塩浴浸炭ともいう。 |
salt bath carburizing ;liquid carburizing |
滴注浸炭 | 鋼製品を,滴注剤による浸炭性ガスの中で加熱し,浸炭を行う処理。 備考 滴下浸炭ともいう。 |
drip feed carburizing |
固体浸炭 | 鋼製品を,固体浸炭剤の中で加熱し,浸炭を行う処理(10)。 | pack carburizing ;box carburizimg |
炭化物分散浸炭 | 高濃度浸炭を行い,浸炭層に粒状炭化物を析出分布させる浸炭。 備考 CD 浸炭ともいう。 |
carbide dispersion carburizing |
高温浸炭 | 浸炭時間を短縮するため,通常の浸炭温度(約850∼930℃)より高い温度で行う浸 炭。 |
high temperature carburizing |
透過浸炭 | 鋼製品の断面中心(心部)まで行う浸炭。 | homogeneous carburizing |
カーボンポテンシャル | 鋼製品を加熱する雰囲気の浸炭能力。 備考 浸炭温度でガス雰囲気と平衡に達したときの鋼の表面の炭素濃度で表す (2)。 |
carbon potential |
エンリッチガス | 浸炭性ガス雰囲気のカーボンポテンシャルを増加させるために添加する炭化水素などの ガス(2)。 |
enriching gas |
浸炭窒化 | 鋼製品の表面層に炭素を主体として,窒素を同時に拡散させる処理(2)。 備考1. 浸炭浸窒ともいう。 2.浸炭性ガスにアンモニアを添加して行う,ガス浸炭窒化などがある。 3.装置によって,真空浸炭窒化(vacuum carbonitriding),プラズマ浸炭窒化 (plasmacarbonitriding)などがある。 |
carbonitriding |
窒化(ちっか) | 金属製品の表面層に窒素を拡散させ,表面層を硬化する処理(2)。 備考 ガス窒化,プラズマ窒化などがある。 |
nitriding |
ガス窒化 | 金属製品をアンモニアガス中で加熱し,窒化する処理(11)。 注(11) JIS B 6915参照。 |
gas nitriding |
軟窒化 | 金属製品を適切な温度で加熱し,その表面に,窒素を主体とし炭素又は酸素を同時に拡 散させ,窒化層(軟窒化層)を形成させる処理(11)。 備考 ガス軟窒化,塩浴軟窒化,プラズマ軟窒化などがある。 |
nitrocarburizing |
ガス軟窒化 | 金属製品を軟窒化性ガスを主体とする雰囲気中で加熱し,軟窒化を行う処理(11)。 | gas nitrocarburizing |
塩浴軟窒化 | 金属製品を軟窒化性塩浴中で加熱し,軟窒化を行う処理(11)。 | salt-bath nitrocarburizing |
酸窒化 | 金属製品を適切な温度で加熱し,その表面に,窒素を主体とし,酸素などを同時に拡散さ せ,窒化層(酸窒化層)を形成させる処理。 備考 ガス酸窒化 (gasoxynitriding),プラズマ酸窒化などがある。 |
oxynitriding |
浸硫窒化(しんりゅうちっか) | 鉄鋼製品を適切な温度で加熱し,その表面に,窒素を主体とし,炭素,硫黄などを拡散さ せ,窒化層(浸硫窒化層)を形成させる処理。 |
sulphonitriding |
酸化皮膜処理 | 酸化性雰囲気中の化学反応によって,金属製品の表面に酸化皮膜を形成させる処理。 | oxide film treatment |
水蒸気処理 | 水蒸気を利用して,金属製品の表面に酸化皮膜を形成させる処理(2)。 備考 目的は,潤滑能力などを高めることにある。 |
steam treatment |
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(3)高エネルギー熱処理
用語 |
定義 |
対応英語(参考) |
---|---|---|
高エネルギー熱処理 | 高密度エネルギーによって,加熱して行う熱処理の総称。 備考 高周波熱処理,電子ビーム熱処理,レーザ熱処理,プラズマ熱処理,炎熱処 理(フレーム熱処理)などがある。 |
high energy heat treatment |
高周波熱処理 | 高周波誘導加熱を用いる熱処理の総称。 | induction heat treatment |
高周波焼入れ | 高周波誘導加熱を用いる焼入れ。 備考 通常は表面硬化焼入れを目的とするが,無心焼入れを目的とする場合があ る。 |
induction hardening |
高周波焼戻し | 高周波誘導加熱を用いる焼戻し。 | induction tempering |
高周波焼入焼戻し | 鉄鋼製品の表面全体又は部分の表面硬化を目的として,誘導加熱によってAc3又はAc1 点以上の適切な温度に加熱した後,適切な冷却剤で冷却し(焼入れ),さらに硬さを調節 し,じん(靱)性を増すために,Ac1点以下の適切な温度に通常の焼戻し炉中で加熱した 後,冷却する(焼戻し)処理(12)。 注(12) JIS B 6912参照。 備考 焼戻しは高周波焼戻しも含む。 |
induction hardening and temperimg |
高周波焼なまし | 高周波誘導加熱を用いる焼なまし。 備考 通常は加熱後空冷する。 |
induction annealing |
高周波通電焼入れ | 鉄鋼製品の所定部分に対して,高周波電流を通じた電気抵抗加熱,又は高周波誘導加 熱を併用して加熱後,焼入れする処理。 |
induction resistance hardening |
電子ビーム熱処理 | 電子ビーム加熱を用いる熱処理の総称。 | electron-beam heat treatment |
電子ビーム焼入れ | 電子ビームによる部分加熱を用いる表面硬化焼入れ。 | electron-beam hardening ; electron-beam surface hardening |
レーザ熱処理 | レーザ加熱を用いる熱処理の総称。 | laser heat treatment |
レーザ焼入れ | レーザによって部分加熱をする表面硬化焼入れ(13)。 注(13) JIS H 0211参照。 |
laser hardening |
レーザ焼なまし | レーザ加熱による瞬間焼なまし。 | laser rapid annealing |
瞬間焼なまし | 金属製品の表面に高エネルギーのレーザ,電子ビームなどを照射し,短時間に表面の欠 陥やひずみを取り除く処理(13)。 備考 ラピットアニーリングともいう。 |
flash annealing |
表面溶融処理 | 金属製品の表面を高エネルギーのレーザ,電子ビーム,放電,炎などで加熱して,表面 を急速溶融,凝固させる処理(13)。 備考 レーザ表面溶融処理 (laser surfacemelting),電子ビーム表面溶融処理 (electron-beam surface melting)などがある。 |
surface melting treatment |
アロイング | 金属製品の表面に他の物質を添加して,高エネルギーのレーザ,電子ビーム,放電,炎 などで加熱して,それらの合金又は化合物を表面に形成する処理(13)。 備考 レーザアロイング (laser surface alloying),電子ビームアロイング (electron-beam surface alloying) などがある。 |
alloying ;surface alloying |
プラズマ熱処理 | 減圧したガス雰囲気中で,陰極とした金属製品と,陽極との間に生じるグロー放電による プラズマを用いた熱処理の総称。 |
plasma heat treatment |
プラズマ窒化 | 減圧した窒化性雰囲気中で,陰極とした金属製品と陽極との間に生じるグロー放電によ るプラズマを用いた窒化(14)。 注(14) JIS B 6915,JIS G 0201及び JIS H0211参照。 備考 イオン窒化ともいう。 |
plasma nitriding |
プラズマ浸炭 | 減圧した浸炭性雰囲気中で,陰極とした鋼製品と,陽極との間に生じるグロー放電による プラズマを用いた浸炭。 備考 イオン浸炭ともいう。 |
plasma carburizing |
プラズマ浸炭窒化 | 減圧した浸炭窒化性雰囲気中で,陰極とした鋼製品と,陽極との間に生じるグロー放電 によるプラズマを用いた浸炭窒化(2)。備考 イオン浸炭窒化ともいう。 |
plasma carbonitriding |
プラズマ軟窒化 | 減圧した軟窒化性雰囲気中で,陰極とした金属製品と,陽極との間に生じるグロー放電 によるプラズマを用いた軟窒化。 備考 イオン軟窒化ともいう。 |
plasma nitrocarburizing |
プラズマ酸窒化 | 減圧した酸窒化性雰囲気中で,陰極とした金属製品と,陽極との間に生じるグロー放電 によるプラズマを用いた酸窒化。 |
plasma oxynitriding |
炎熱処理(ほのおねつしょり) | 炎で直接加熱して行う熱処理の総称。 備考 フレーム熱処理ともいう。 |
flame heat treatment |
炎焼入れ | 炎で直接加熱して行う焼入れ(2)。 備考 フレーム焼入れともいう。 |
flame hardening |
炎焼なまし | 炎で直接加熱して行う焼なまし。 備考 フレーム焼なましともいう。 |
flame annealing |
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(4)拡散浸透処理
用語 |
定義 |
対応英語(参考) |
---|---|---|
拡散浸透処理 | 金属製品の表面に,他の金属又は非金属を拡散浸透させる処理の総称(13)。 備考1. 拡散被覆処理ともいう。 2.パック拡散浸透処理 (pack diffusionmetallizing ;pack cementation),液体拡散浸 透処理 (liquid diffusionmetallizing),ガス拡散浸透処理 (gas diffusion metallizing)などがあ る。 |
diffusion metallizing |
熱反応析出・拡散法 | 鉄鋼製品を,炭化物生成金属粉末又は合金粉末を添加した溶融塩中に浸せきし,製品 表面に鉄鋼中の炭素を利用して炭化物,窒化物,炭窒化物などの皮膜を形成させる処 理。 備考1. 流動層炉を使用する方法もある。 2. TRD法ともいう。 |
thermo-reactive deposition and diffusion |
アルミナイジング | 金属製品などの耐食性,耐熱性などを向上させるために,高温でアルミニウムを表面に 拡散被覆する処理(2)。 備考 カロライジングともいう。 |
aluminizing |
クロマイジング | 金属製品の耐摩耗性,耐食性,耐熱性などを向上させるために,高温でクロムを表面に 拡散させる処理(2)。 備考 粉末法 (pack method),ガス法 (gaschromizing) などがある。 |
chromizing |
ボロナイジング | 金属製品の耐摩耗性などを向上させるために,高温でほう素を表面に拡散させる処理 (2)。 備考 粉末法 (pack method) ,ガス法 (gasboronizing) などがある。 |
boronizing |
シリコナイジング | 金属製品の耐食性などを向上させるために,高温でけい素を表面に拡散させる処理(2)。 | siliconizing |
クロムアルミナイジング | 金属製品の耐食性,耐熱性などを向上させるために,クロム及びアルミニウムを同時に 表面に拡散させる処理。 |
chromaluminizing |
物理蒸着 | 高温加熱,スパッタリング又はアーク放電などの物理的方法で物質を蒸発し,製品の表 面に凝縮させて,薄膜を形成する処理の総称(13)。 備考1. PVD ともいう。 2.真空蒸着 (vacuum evaporation),イオンプレーティング(ionplating),スパッタリング (sputtering)などがある。 |
physical vapor deposition ; PVD |
化学蒸着 | 気相化学反応によって,製品の表面に薄膜を形成する処理の総称(13)。 備考1. CVD ともいう。 2.常圧 CVD (atmospheric pressure CVD),減圧 CVD(low pressure CVD), プ ラ ズ マ CVD(plasma CVD),レーザ CVD (laser CVD) などがある。 |
chemical vapor deposition ; CVD |
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(5)品質・試験
用語 |
定義 |
対応英語(参考) |
---|---|---|
表面硬さ | 金属製品表面の熱処理後又は熱処理前などの硬さ。 | surface hardness |
(窒化層)表面硬さ | 金属製品の窒化,軟窒化,酸窒化などを行った後の窒化層表面の硬さ(15)。 注(15) JIS G 0563参照。 備考 窒化層深さに対応して,ビッカース表面硬さ,ヌープ表面硬さ,ロックウェルス ーパーフィシャル15N表面硬さ及びショア表面硬さがある。 |
surface hardness of nitri- ded case |
硬化層 | 焼入れで硬化した層又は表面硬化したときの硬化した層。 | quench-hardened case ; quenched case ;quench- hardened layer |
化合物層 | 拡散浸透処理,物理蒸着,化学蒸着などをしたとき,金属製品の表面に形成される化合 物の層。 |
compound layer |
拡散層 | 拡散浸透処理,化学蒸着法などにおいて,元素又は化合物の拡散が認められる層。 | diffusion zone |
焼入硬化層深さ | 焼入れで硬化した深さ(16)。 注(16) JIS G 0201参照。 備考1. 硬化層深さともいう。 2.有効硬化層深さ及び全硬化層深さがある。 |
case depth |
有効硬化層深さ | 硬化層の表面から,規定する限界硬さの位置までの距離。 | effective case depth |
全硬化層深さ | 硬化層の表面から,硬化層と生地との物理的又は化学的性質の差違が区別できない位 置までの距離。 |
total case depth |
(炎焼入れ又は高周波焼入 れ)有効硬化層深さ |
炎焼入れ又は高周波焼入れにおいて,焼入焼戻しをした硬化層の表面から,規定する限 界硬さの位置までの距離(17)。 注(17) JIS G 0559参照。 |
effective case depth after flame hardening or inductionhardening |
(炎焼入れ又は高周波焼入 れ)全硬化層深さ |
炎焼入れ又は高周波焼入れにおいて,硬化層の表面から硬化層と生地の物理的又は化 学的性質の差違が区別できない位置までの距離(17)。 |
total case depth after flame hardening or induction hardening |
硬さ推移曲線 | 硬化層の表面からの垂直距離と硬さとの関係を示す曲線(18)。 注(18) JIS G 0557,JIS G 0559及び JIS G0562参照。 |
hardness profile curve |
浸炭硬化層深さ | 鋼製品を浸炭し,焼入焼戻しによって硬化した浸炭層の深さ(19)。 注(19) JIS G 0201及び JIS G0557参照。 備考 有効硬化層深さ及び全硬化層深さがある。 |
carburized case depth ; carburizing depth |
(浸炭焼入れ)有効硬化層深 さ |
浸炭焼入れにおいて,200℃を超えない温度で焼戻しをした硬化層の表面から,ビッカー ス硬さ550 (550HV) の位置までの距離(20)。 注(20) JIS G 0557参照。 |
effective case depth after carburizing |
(浸炭焼入れ)全硬化層深さ | 浸炭焼入れにおいて,硬化層の表面から,硬化層と生地の物理的又は化学的性質の差 違が区別できない位置までの距離(20)。 |
total case depth after carburizing |
窒化層 | 金属製品を窒化したとき,硬化した層(21)。 注(21) JIS G 0562,JIS G 0563参照。 備考 窒化,軟窒化,酸窒化などにおける硬化層を総称する場合もある。 |
nitrided case |
軟窒化層 | 金属製品を軟窒化したとき,硬化した層。 | nitrocarburized case ; nitrocarburized zone |
(窒化,軟窒化などの)化合 物層 |
窒化,軟窒化などをしたとき,金属製品の表面に形成される窒化物・炭化物・炭窒化物な どを主体とする層(21)。 備考 白層ともいう。 |
compound layer of nitriding ; white layer |
(窒化,軟窒化などの)拡散 層 |
窒化,軟窒化などをしたとき,化合物層を除いた,窒素・炭素などの拡散が認められる層 (21)。 |
diffusion zone of nitriding |
窒化層深さ | 窒化層の表面から,窒化層と生地の物理的又は化学的性質の差違が区別できない点に 至るまでの距離。窒化層深さは,化合物層深さと拡散層深さとの和である(21)。 |
nitrided case depth,nitriding depth |
実用窒化層深さ | 窒化層の表面から,生地のビッカース硬さ値又はヌープ硬さ値より50 高い硬さの点に至 るまでの距離(22)。 注(22) JIS G 0562参照。 |
practical depth of nitrided case |
(窒化,軟窒化などの)化合 物層深さ |
窒化,軟窒化などをしたとき,窒化物・炭化物・炭窒化物などを主体とする層の表面から の深さ(21)。 |
compound layer depth of nitriding ;white layer depth ofnitriding |
(窒化,軟窒化などの)拡散 層深さ |
窒化,軟窒化などをしたとき,化合物層を除いた窒素・炭素などの拡散が認められる層の 深さ(21)。 |
diffusion zone depth of nitriding |
粒界酸化 | 熱処理において,金属製品の表面層の結晶粒界が,熱処理雰囲気中の酸素によって酸 化される現象。 備考 内部酸化ともいう。 |
internal oxidation |
脱炭 | (1)鉄鋼を炭素と反応する雰囲気で加熱するとき,表面から炭素が失われる現象(2)。 (2)浸透拡散処理で表面に炭素が移動して内部に低い炭素濃度の部分ができる現象(2)。 備考 脱炭している層を脱炭層という。 |
decarburization |
復炭 | 鋼製品の脱炭層を,元の炭素量に回復するために行う浸炭処理。 | carbon restoration |
(熱処理)変形 | 熱処理によって生じた製品の変形。 備考1. 熱処理ひずみともいう。 2.寸法変形(size distortion) , 形状変形(shape distortion)がある。 |
distortion |
焼割れ | 焼入れによって発生する割れ(2)。 | quench crack |
(熱処理の)残留応力 | 熱処理において,材料又は製品の表面と内部の温度差,又は変態によって発生し残留し た応力。 |
residual stress after heat treatment |
有効加熱帯(ゆうこうかねつ たい) |
熱処理の目的に応じて,金属製品を温度許容範囲内に保持できる熱処理装置における 装入領域(23)。 注(23) JIS B 6901参照。 |
effective working zone of heating equipment |
有効処理帯(ゆうこうしょりた い) |
プラズマ熱処理炉内において,金属製品に均一なグロー放電を発生させ,熱処理の目的 に応じて加熱温度に要求される温度許容範囲で保持できるように,あらかじめ類似形状 品の温度測定によって設定した装入領域(11)。 |
effective treating zone of plasma equipment |
酸素センサ | ガス雰囲気中の酸素濃度を測定するセンサ。 備考 ガス浸炭などの雰囲気制御に使用する。 |
oxygen probe |
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